前十字靭帯断裂
前十字靭帯は膝関節の動きを制御している重要な靭帯です。犬ではこの靭帯を損傷する事がしばしばあります。外傷が原因の事もありますが、遺伝的な素因があるとも言われています。完全断裂・部分断裂・半月板損傷の併発といったバリエーションがあります。部分断裂の診断は難しく、見逃されているケースも少なくないと思われます。かばいながらの歩行や十分に体重をかけられないような歩き方が続く場合は、整形外科に慣れた専門医を受診することをお勧めします。
前十字靭帯断裂では、特に体重の軽い子(肥満のない10kgまで)では保存療法(内科治療)で良くなるケースもあります。但し、すべての症例で良くなる訳ではないため積極的にはお勧めしましせん。基本的には外科治療が一番の近道だと思います。部分断裂の場合も外科手術が第一選択の治療となるでしょう。
現在、主流となっている手術は大きく分けて人工靭帯法(MRIT、ラテラルスーチャー)と骨切り法(TPLO、TTA)です。その他、タイトロープ法や骨アンカーを用いた方法などが提唱されています。
当院においては、人工靭帯法かTPLOを選択することがほとんどです。体重や費用など含めて相談いたします。大型犬の場合は人工靭帯法に比べていくつかの点で優れているTPLOが第一選択の手術法としています。TTAも前十字靭帯断裂に対する優れた骨きり手術法ですが、TPLOの方がより歴史があり、成績が安定している、世界的にも多数派である、などの理由から当院ではTPLOを選択しています。